北欧にて・その1

日に日に暖かさが増し春へと近づいている京都の夜、ふと空を見上げて見える雲が緑色ではなく白色であることに気づき、急に現実に引き戻された気分になる。

約10年前、Anchorage からせっせと自転車を漕いでたどり着いた「Arcitic Circle   Latitude 66º33' 」の看板のところで写真を撮ると、僕はそれ以上北へとは進まずFaribanksの町へと引き返した。

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一月近くかけてやっとたどり着いた北極圏へと、
AlaskaとLapplandと場所は違えど、今度は飛行機で一瞬にして訪れる事ができた。

 

 北緯68度の村、Abisko

 Gulf streamのおかげで緯度の割には暖かく、3月にもなると夜と昼が同じぐらいに日も長くなっていた。しかし目の前を電車が走るような土地とは言え、時には北極圏の顔を少しばかり見せてくれる日もあった。

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こんな日に「線路の外の風景」の歌詞のように、見渡す限り雪原の中を歩いていると、同じところをぐるぐると回り続ける事うけあいだ。こんな時は家の中でのんびりとコーヒーでも飲む事にしよう。(※ 近所のスーパーへ買い物に行くときの一枚。先に行っておかないと6時に閉まっちゃうからね。)

 

 週末をアウトドアに費やすのに最高の環境であるもとい、ツンドラでの植生を研究するには最高の環境であるとはいえ、やはりそれなりに厳しく寂しい場所なんだなと思わずにはいられなかった。この土地で2年間をproductiveに過ごす事ができるのは日本人研究者数多しとはいえGon氏を含めそれほど多くはないだろう。少しの間だけの滞在だったけれど、まだうまく言葉に出来ない「この世界で生きていくための心持ち」の様なものを感じ・見せつけられた。

 現地で出会った様々な人たちに感謝をしたい。

 

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  一年振りに再会したAndresにKiruna空港でピックアップしてもらい、満月の下100kmの道を走る途中で雲のような薄ぼんやりとしたオーロラが見えた。Abiskoに着いたのは夜遅くになったけれど、サプライズパーティーですっかり出来上がったGon氏と歩いて帰る道すがらオーロラは少しだけ明るさを増しており、お邪魔する彼の家にたどり着いた頃にはベランダから北の空にきれいに見えていた。

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