南信さくらツアー・二日目

多少重い頭を抱えて明るいテントを出れば、暑いほどの一面の青空。
マットを外に出してだらだらと朝食をとる。朝から寒くなく過ごせる良い季節になった。


今回のドライブは伊那谷のさくらを見るのをコンセプトに、19歳の頃に自転車で走った道の一部を逆向きに辿るコースで南下した。分杭峠を下って南に向かえばそこは信号機一つ無い大鹿村
せっかくなので少し寄り道してするぎ農園で朝イチのコーヒーを頂いた。標高1000mもある場所で山の急斜面に切り開かれた田んぼや畑を眺めながら、ただひたすらぼーっとする。


その後、村の中心地近くにある大西公園に寄るとちょうどさくら祭りをやっていた。今年は開花が遅く残念ながらまだ3分咲きといったところだったが、会場のゆったりとした雰囲気も良く、川の奥に見える赤石岳の姿をのんびりと眺める事ができた。
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大鹿村からさらに南下してしらびそ峠へとぐんぐん登っていくと、峠に着いた途端に南アの絶景がどんと広がった。
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塩見岳から荒川・赤石・聖・光と主稜線が続くのが見える。
思い返せばここから見える範囲の稜線を歩くだけで5回山に入った事があるけれど、どれも稜線部分は細切れになっていてきれいに繋げていない。どの山行でも稜線に達するまで最低1日は費やしていて、やはり南アはアプローチが遠く奥深いなぁ。その辺りは少し日高に似ている。


峠からガレの多い道を辿って南下すれば、そこは懐かしの下栗の里
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↑この写真は、そば処ばんば亭から歩いて15分ほどの山中斜面にあるビューポイントからの眺め。
なぜにこのような所に暮らす事にしたのかとても気になる。河川の氾濫被害から逃れるためもあったのかもしれないけれど、白く輝く聖岳が集落からきれいに望める景色を前にして、初めに住んだ人はこの山をいつも見ていたかったのかもしれないなと呟くと、ランジ野郎も同じ事を考えていた。


ばんば亭での昼飯に、蕎麦と一緒に頼んだ下栗芋の田楽がめちゃうまかった。一口で食べられ程よいる大きさと、煮ても焼いても崩れないしっかりとした歯ごたえがあり、味噌をぬった皮まで美味い。聞くとどうもこの下栗の急斜面でしかうまく育たないらしく、水はけとか土の性質に寄るようだ。ココでしか味わえない一品!


残りのガソリンを気にしながら走っていたけれど(何しろ高遠からここまで空いてるGSは一軒もなく、京都を出てから一度も給油してなかったのだ)、あとは飯田の町まで下るだけなので十分足りそう。ほっと一安心。まだ桜が咲いていなかった下栗を出て、長いトンネルを抜けて飯田の町に下りると季節も少し進み、桜の花が町のあちこちで咲いていた。


中心街を少し離れた住宅地の中でその桜はぽつんと、しかし堂々と立っていた。
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増泉寺の天蓋桜。
その幹の側に立って見上げるとその名の通り空を蓋せんばかりの見事な枝振り。
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推定樹齢300年。お寺の真ん中に桜を植えた時は、ここまで立派に大きくなる事まで思っていたのだろうか。
迫る夕暮れを前にぼんやりと眺めていた。


さらに恵那山方面へと入り、有名な駒つなぎの桜へ・・・細いどんどん登っていったら車道の終わりまで行ってしまった!
あれ〜?っと引き返してみると、その桜はまだ全然咲いておらず、背景に隠れて気付かずに通り過ぎてしまっていた。(笑)
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駒つなぎの桜。あと1,2週間ほど早かったな〜。田植えには早いけれど桜の前の田んぼだけ水が張られていて鏡写しになり、写真の腕の見せ所?


しかし実はこの桜よりも印象深かったのが、間違えてたどり着いてしまった車道終点にあった神坂神社。
車を停めて何気なく古い石段を登ってみると、社の脇にそびえ立つ巨大な杉の木が見えた。
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それだけでなく境内には栃の木と思われる苔むした巨木が何本も立っていた。
杉の木は推定樹齢千年以上。こういう自然と一体化しつつ歴史と雰囲気のある場所が、当たり前のようにあちこちにあるのが日本の良い所だなと改めて思う。偶然とは言え、日本を旅立つ前の友人にこのような場所を訪れてもらえたのは良かった。


少しずつ押し迫る夜に急かされるように、来た道を戻り園原ICに入るとあとは高速をひた走り帰京した。
ネットの発達した昨今、メールでもブログでもチャットでもいつでもどこいにいても連絡は取れるけれど、みんなで家に集まって飲んだり、山を歩きながら馬鹿話をしたりするあの貴重な時間を、世界のどこかでまた作れたら良いなと思う。