南信さくらツアー・一日目

学生の頃、まだ一人ぼっちでも山歩きができていた頃のこと。
白峰南嶺から入って南アを歩いて6日目に、鋸岳手前まで来て六合石室に泊まるつもりで下りたのが、間違えて戸台川に下りる道に入ってずんずん下りてしまい、途中で気付くも心が折れてそのまま戸台口までその日のうちに歩いて下山した事があった。ヒッチで高遠町まで送って頂き、さくらの湯にのんびり浸かってから食堂で蕎麦をすすった夜の事を良く覚えている。あの悔しさと安心感がない交ぜになった気持ちは当時の僕がよく味わっていた感情だった。
さて、さくらの湯には19歳の秋にも自転車で通ったときに入った事があり、その露天風呂の雰囲気もぬるっとした泉質も当時から好きだった。その頃から、いつか桜の咲く季節にまたここに来たいとずっと思っていたのだけれど、この春から山仲間であるランジ野郎が日本を離れるのでちょっくら旅行でもすっかと、ぎりぎりのタイミングで念願の桜を見に出かける事ができたのだった。


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高遠城址公園。レンタカーを借りて土曜の朝発でぷぷいと伊那まで走ったらもうすぐそこ。
むさいメガネ男二人が桜の木の下で昼寝したとかどうでもいい話はともかく、満開には一週早かったようだけど公園から城跡までずっと桜の木が広がっていて、しかも河川敷とは違い、その下がずっと平らな地面なもんだから歩いたり座ったりのんびりするだけで気分は最高。
ソメイヨシノとは色合いも花の密度も違う雰囲気だなと思っていたら、すべてコヒガンザクラと呼ばれる種のようで、おそらくそのおかげで樹齢も100歳を越えるような木もあれば、切り株から新しい幹が生えているものもあった。老木若木入り乱れる桜の園でここまで広い所はなかなか無いのではないだろうか。


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高遠城址の高台から見ると町のあちこちでピンク色の桜の木が立っているのが見えて、町全体でこの桜を大事にしているように感じられた。川沿いにぽつんと立っている桜にも風情があり、穏やかな夕暮れが近づいていた。
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勝間のしだれ桜はまだまだつぼみだった。すくっと元気に高く育っているように見えるし、まだまだ大きくなってほしいな。
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買い出し後、久々のさくらの湯に浸かってご飯をだべた後は、闇夜の中をパワースポットで大人気の分杭峠へ。峠の様子は昔とすっかり様変わりしていて、ヘッデンも点けずに煌々と照らす満月の下で山の夜の匂いを存分に味わった後、寝床を求めて大鹿村へと下りることにした。
川の音の聞こえる適当な平地を見つけた僕らは、テントの中で酒を注いでは飲み、アテを焼いては飲み、を続け、来し方6年間をゆっくりと振り返っていた。