出張先でのできごと

出張中に僕らの(それはそれは狭い)分野のセッションがあり、最初の二人だけ聞いていると、そのうちの一人が僕の論文を引用してくれていて嬉しかった。僕自身が10年前のその人の論文がとても良い内容だったと思っていて(結果もさることながら議論も過不足なく情報と示唆に富むものだった)、そんな人から引用されるのはやはり嬉しいもんだ。


後でボスづてに聞いた話では、大御所のエライ先生から「あの内容は面白いからPNAS*1に出し直せ」と言われたそうだ。



・・・今更おせーよ(-“-;)




あの結果は他の先生らからも良い評価を受けたらしく、それは勿論それで嬉しいのだけど、おそらくこんな事を言われたに違いない。
「あの発表中にあった結果、非常に面白いじゃないか。どこの論文に載ったんだ?*2
「ん?そんな雑誌じゃ誰も読んでくれないぞ。今から書き直してPNASに出せ。」
・・・こっちは卒業かかってて時間的に必死だったのだ。そんな高級雑誌が意識に登るわけ無い。
でもあの雑誌はエライ人(分かりやすく言うと)の推薦があるとかなり通りやすくなると聞いたことがある(必ず通るという訳ではない)。先に彼の推薦をゲットしていれば・・・と一瞬思わずにはいられない。


んー・・。多少二番煎じな所もあるし、結局生理学的な意味が不明なままなので、まだまだ不満が一杯なんやけどなあ。
と僕自身は思うけれど、よく現実を考えてみると、違う分野の人に内容に興味を持ってもらうためには「(数字上の)評価の高い雑誌に載った」という事実が大きく影響を与えるかもしれない。それは、僕自身の評価の上下にも明らかに影響するし、その分野全体を考えると、関係する論文が(中身を伴っているかは別にして)少しでも有名な雑誌に載ることがその分野自体の発展・存続にも影響を与えるのかもしれない。
だから、同業者同士ですこしでも下駄を履かせあう努力をするのは、大事なことに違いない。
その辺りの努力だとか欲だとかを、もうちょっと意識してみても良いのではと思ったできごとだった。



・・・出し直さないけどね。(新しい実験はやるかも。)

*1:USAの有名な科学雑誌。数字上の評価はかなり高い雑誌だけど「おーすげー」というものから「何でこれ載ってんの?」というものまで中身は玉石混淆。おそらくその原因は上記のシステムによるものと思われる。通称"Post Nature and Science"(「NatureとScienceに蹴られた後に投稿する雑誌」)

*2:というかこの質問自体が、そのエライ先生が最近の研究をちゃんとフォローしていない事を意味しいている。まったく。