「自由」の形

自転車の事を知らない友達から勧められて、読み始めた一冊。

サクリファイス

サクリファイス

自転車ロードレースを舞台にした小説で、日本の実業団チームに所属する若手アシストが主人公。
最近は「【送料無料】茄子 アンダルシアの夏」や「Over Drive」のおかげか、ロードレースものが流行っているのだろうか。書店に行っても自転車関係の雑誌が沢山平積みされている所を見ると、自転車の流行がそのまま自転車レースへの興味へと繋がっているのだろう。僕自身はレースに関わったことはないけれど、自転車好きとしては何だか嬉しい。


人力の乗り物の中で最も効率の良いマシンであるが故に、人間の身体能力を限界まで引き出させる、自転車という存在。
ヨーロッパ発祥のチームロードレースという制度によって生み出された、献身的なアシスト選手という存在。
自分の勝利に対して貪欲な選手たちの中で、エースのための使い捨て燃料としてアシストに徹する事に、自分なりの「自由」を感じて走ることの出来る主人公。
それは、もっとも重くもっとも辛く肩にのしかかる勝利へのプレッシャーからの「逃げ」でもあるとも言えるのだが、その分「ただ走ることだけ」にその身を燃やすことに価値を見いだす事のできる悲壮な自由だと、僕は共感する。


まだ半分しか読み終えてないけれど、意外と面白い。
文章は軽く、テンポもいいので、さくさく読めてしまう。マンガみたいな本、と吐き捨ててしまえばそれまでかもしれないが、そこは好きずきだろう。
【送料無料】夜のピクニック」を読んだときの気分に似ていて、主人公が背負っているものも題材自体もそれほど重いものでもないけれど、青春のひとときを思い出しながらも今の状況を振り返り、走り出したくなる様な衝動を起こさせる一冊だと思う。
おそらく最後に、主人公は近しい人に何かを遺して死んでしまうのだろうなと思うのだが、果たしてどうだろう?


共同食料の米袋を後ろに積みながら、峠の登りに汗を流したことのある人にはオススメの一冊。




2/18追記:
読み切りました。そうきたか!て感じです。
後半は一転ミステリー調になり、最後になってやっと真相(真意)が分かります。
うん、悪くない。スペインの空が似合う爽快感です。


唯一登場する女性がちょっと可哀想なので、女性にはお勧めしませんが、
前を走る背中を追いかけ続けたことのあるオトコにはオススメの一冊です。